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相続放棄とペットの関係について

ある人が亡くなった時に、遺産では返しきれないような借金があることがわかったとします。遺族はその借金を相続したくないので、多くの場合は相続放棄をするでしょう。しかし故人は生前ペットを飼っていて、遺族はそのペットだけは引き取りたいというケースがあります。

ここで問題なのは、相続放棄をしてもペットを引き取ることが出来るかという点です。そこで今回は、相続放棄とペットの関係について紹介します。


相続放棄とは?

そもそも相続放棄とは、残した財産や借金などを遺族が全て受け取らないということです。

そのため、財産と借金を比べた場合に確実に借金の方が多い時は相続放棄を選択する人が多いです。なぜなら、とても返しきれないくらいの借金を残して亡くなったとしても、本来ならば法定相続人は借金を全て返済しなくてはならないからです。

そこで、財産を全て放棄して尚且つ借金も引き継がずに「初めから相続人ではなかった」こととするのです。

しかし注意が必要なのは、 相続人が相続する財産の一部もしくは全てを処分したり、相続放棄をした後に財産の一部もしくは全てを隠す・使う・故意に財産目録に書かなかった場合は単純承認したとみなされる点です。単純承認とは財産を全て受け継ぐということなので、相続放棄が出来なくなってしまいます。

そもそも相続する財産とは?

故人から相続する財産のことを相続財産と言いますが、そもそも相続財産には「相続税がかかる財産」と「相続税がかからない財産」の2種類があります。相続税法第2条には「相続又は遺贈により取得した財産の全部に対し、相続税を課する」とありますが、相続税がかからない財産も存在します。

まず相続税が課税される財産とは、金額を計算して目安を付けられるような経済的価値のあるものの全てを指します。例えば現金や預貯金や有価証券、宝石や土地や家屋などが含まれます。他には、死亡退職金や死亡保険金のように故人の財産ではなく受取人が指定されているお金でも、その人が亡くなったことによって発生した財産も「みなし相続財産」となります。

また、死亡時から見て3年以内に贈与で取得した財産も同様です。さらには、ゴルフ会員権や特許権や著作権なども相続財産です。相続税が課税されない財産とは、墓地・墓石・仏壇などの日常の礼拝に使用するもの(骨董的な価値のあるものを除く)や、宗教や慈善事業のように公益目的の事業を行う個人から相続などによって取得した財産を公益の事業で使うのが確かなものです。

他には、心身障害者共済制度から支給される給付金を受け取る権利や損害賠償金や弔慰金などがあります。

故人の飼っていたペットは何に該当するの?

動物を愛するならば心外に思う人もいるかもしれませんが、ペットは車や家財道具のように「物」として扱われます。そして、財産的な価値があるとみなされます。つまり相続財産となるので、例えば「形見分け」として受け取ることは出来ません。

なぜなら、形見分けに該当するような物品とは個人を偲ぶような「財産的価値のないもの」だからです。よって、相続放棄をしてしまうと本来であればペットに対する権利も義務も無くなってしまいます。


相続放棄をするとペットを引き取れないの?

理論上はペットを引き取ってしまうと単純承認したとみなされて、相続放棄は出来なくなってしまいます。但し家庭裁判所へ相続放棄の申請をしても、実際にはそこまで厳密に審査されるわけではりません。また、遺族がペットを引き取ったとしても故人へお金を貸した側が「遺族の相続放棄は無効」として訴えてくるケースは少ないでしょう。

そこで万が一訴えられたとしても、裁判所は遺族の相続放棄を認める可能性が高いです。ただし、訴えられて万に一つの確率で相続放棄が無効になるリスクを考えると、可能であれば相続人となる遺族ではなくそれ以外の人がペットを引き取る方が良いでしょう。

また、民法940条1項によると相続放棄をした人には財産を保全・管理する義務があります。そのため、他にペットを引き取る人がいなければ保全や管理の名目でペットを引き取って世話が出来るという考え方もあります。

しかし、この場合は他の相続人や相続財産管理人がペットを引き取ると申し出たならば、その人に引き渡さなければいけません。さらに、ペットが子どもを産んだ場合はその子どもも保全・管理する必要があるので、安易に売ったり譲ったりは出来なくなります。

親や配偶者が亡くなった場合の相続

相続放棄が認められる前にペットに餌をあげていいの?

相続放棄の申請をするとして、どのような手続きにどれくらいの期間がかかるのでしょうか。また、相続放棄が認められるまでの間にペットに餌をあげてしまうと相続放棄が受理されなくなるのでしょうか。相続放棄をするためには、家庭裁判所に書類を提出して受理される必要があります。

また、相続があることを知ってから3か月以内に手続きをしなくてはいけません。しかもすぐに申請に行けるとも限らず、故人の借金がどれ位あるのかが判明するまでに時間がかかる場合もあります。なぜなら遺族があらかじめ借金を知っていたとは限らず、死後に遺品を整理している時に借金の存在を知り、全ての借金を調べ終わるまでには時間が必要なケースもあるからです。

また3か月以内に調べるのが難しいのであれば、「相続放棄のための申述期間伸長の申立」をして期限を延長してもらわなければいけません。いざ相続放棄をすることにした場合は、故人の戸籍謄本や住民票(もしくは戸籍の附票)、相続放棄する人の戸籍謄本や相続放棄申述書、800円分の収入印紙と郵便切手を用意します。

そして、故人の最後の住所を管轄する家庭裁判所に提出します。提出する際は、持参しても郵送でも構わないケースが多いです。ただし、一部の家庭裁判所では郵送では受け付けてくれない場合もあります。その後、家庭裁判所から送付される「照会書」に必要事項を記入して返送します。

そして相続放棄が認められる場合は、家庭裁判所へ照会書を返送してからだいたい1週間から10日後に「相続放棄申述受理通知書」が届きます。つまり、故人が亡くなった時点から3か月以内に借金について調べ上げて相続放棄の判断をして必要書類を家庭裁判所へ提出し、照会書を返送してから10日近く待たなければいけないということです。

これだけ時間がかかるのであれば、誰かがペットに餌をあげないと死んでしまいます。ただし、ペットに餌をあげたいのに単純承認とみなされて相続放棄が出来なくなると多くの人は困ってしまいます。しかし法律もそこまで無慈悲ではないようで、餌をあげても単純承認したとはみなされません。

なぜなら、財産であるペットの保全・管理義務を遂行しているとみなされるからです。